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灰羽連盟



(作品内容に関してのネタバレを含みます)。

漫画などが中途半端なところで打ち切られる場合、最終回近辺で「ピンチ」を演出することがある。 その「ピンチ」を解決することで、作品全体にケリが付いたかのように錯覚させる、というやり方だ。
「灰羽連盟」の最終回の着地の美しさは、この本来なら打ち切り漫画のラストとして使われがちな手法を作品の本質的なテーマに絡めて使ったことにある。「灰羽」はレキを救済するという大命題の解決によって他の多くの謎の未解決を見事に置き去りにした。

たぶん多くの人は「灰羽」の最初の方を見始めた段階で、この作品は、この世界の謎の「種明かし」をしていく作品だろうと見当を付けたはずだ。自分もそういう謎解きをしていくのだろうと思って見ていた。しかし謎解きは行われない。

壁とは何なのか、壁の向こうに何があるのか。ラッカの罪とはそもそも何なのか。 そしてあの「鳥」はいったい何だったのか。
あらゆる謎が曖昧なままに放置され、あくまで登場人物のこころの問題を救済することに話がすり替えられる。
そして心の問題が解決されたのだから、それ以上は何も必要がない、ということになる。
「謎」で話を引っ張っていたのに謎解きをしないのだから、問題があると言えばあるのだが、しかしこの「すり替え」の結果、話がよくまとまっている。
「鳥」はシンボルとしての救済者であり、「壁」は超えていく対象。
説明はいらない。
不満に思うどころか、むしろ「壁の先に何があるか」などについて中途半端な説明をしないでくれてよかった、という気になる。

この作品はあくまで寓話なのである。
世界設定を「こういうことなんですよ」と説明する必要はない。
象徴性を持ったイメージの中で、人間が描ければよいのである。

そして「灰羽連盟」が成功作になったのは、登場人物のトラウマを「具体的な事例」としては描かなかったからだと思う。
あの灰羽の人たちは何らかのトラウマを抱えて灰羽になり壁の中に存在しているのだと思われるが、そのあたりの具体的な理由は意図的に曖昧にされている。
仮に彼らのトラウマの原因を具体的に描写してしまうと、あの寓話的な世界が崩壊してしまう危険性が高い。
(話の内容からして、自殺した人が灰羽になるという解釈が妥当だと思われるが、特に明示されているわけではない)。

「灰羽連盟」においては、(トラウマをベタに書くのではなく)たとえば天使としての羽が黒くなるというようなシンボル性でこころの問題を表現し、うまく寓話的、そして詩的に洗練された世界観にしている。 心的な傷を負うものを天使としてとらえるのは、「傷ついた自分」のナルシスティックな表現として、極めてありがちではある。
だが、それをこうやって見事に描けるのは素晴らしい。

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