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「EVE burst error」



ストーリーのネタバレはありません。
あくまで作品の構造に関しての話。


剣乃ゆきひろ三部作は、どれも甲乙付けがたいのですが、「EVE burst error」は一番単純に楽しめる気がします。
「YU-NO」は攻略に歯ごたえありすぎます。
宝玉セーブ……。
自力でプレーするとなると、大変です。
「YU-NO」のシステムは自力でプレーしてこそ面白いはずなのですが、いかんせん厳しすぎるので、自力でやるとストレス溜まりすぎになります。
普通にシナリオを進めていく「EVE burst error」と「DESIRE」よりは、「YU-NO」の方が、ゲームとして深くていいんですけどね。
自力だと難儀になるので、攻略サイトに頼って、実質一本道プレーになりがちです。


本題に入ります。

「EVE burst error」は、変な言い方になりますが、「逆転裁判」みたいなテイストだと思うのです。
もちろんゲームの仕組みも、キャラも全然違いますが、テイストがそういう感じなのです。
「逆転裁判」が「EVE burst error」に影響を受けているという意味ではなく、漫画的に仕上げるという点で共通しているということです。

つまり私が「逆転裁判」の名前を出してみたのは、漫画的に巧く仕上げている作品として、真っ先に思いついたからです。
「逆転裁判」の裁判は言うまでもなく、現実の裁判から懸け離れたものです。
漫画的な裁判なわけです。
あの作品は全体として漫画的なのがいいわけですよ。
漫画的な設定であり、そしてキャラ設定にメリハリがあって魅力がある。

「EVE burst error」はある種のハードボイルドですが、たとえば大沢在昌の「新宿鮫」シリーズみたいなのとは全然テイストが違うわけです。
「EVE burst error」は出てくる設定も人物も漫画的です。
そしてそれがゆえにとても面白いわけです。
「新宿鮫」みたいにリアルに徹した作品とは別の意味で、漫画的であるがゆえに面白いのです。

私は「新宿鮫」も好きですよ。
第一巻は普通にいいし、第二巻の「毒猿」も痺れます。
直木賞を取った第四巻の「無限人形」は必ずしも面白いとは思わなかったんですけどね。
第六巻の「氷舞」は読んでいて寒気がしましたよ。公安警察とかをよくあそこまで恐く書けたなと思いますね。
まあ「氷舞」は話を膨らませ過ぎて、うまくまとまらなかった印象もあるのですが、ドキドキしながら読みました。

要はリアルに徹するか、漫画に徹するかということです。
中途半端に現実に近かったら失敗作なわけです。

「EVE burst error」は漫画的な作りに徹しているところがいいのです。
リアルっぽくやろうとして、その出来損ないで漫画的になっているのではないのです。
あらゆる部分を漫画的な味付けで敷き詰めている。
「逆転裁判」もそうなのです。
リアルさを完全に排除して漫画に徹しているから、あの作品はよいのです。

意外と難しいと思うんですよ。
漫画的な裁判とか漫画的な警察とか、そういうのに徹して書くのは難しいはず。
たとえば、作品の中に軍隊を出すとして、漫画みたいな軍隊を書ける人はあまりいないと思うんです。
まあ軍事の場合、軍オタと漫画オタがかぶってることも多いので、これは別の意味で難しいかもしれません。
「漫画みたいな軍隊」と書いてみましたが、漫画に出てくる軍隊は結構知識が詰まっていて本格的ですよね。
(「陸上防衛隊まおちゃん」みたいなコメディーは別として)。

私たちが「逆転裁判」に穴を探さないのと同じで、「EVE burst error」にも穴を探そうとは思わない。
漫画的な部品で全部作っているから、雑な部分がかえっていいというところがあるわけです。



「EVE burst error」はある種の推理小説です。

推理小説って、大雑把にわけると、ふたつあると思うんです。

・パズルみたいに犯人を捜していく(本格推理)
・犯人の周辺をいろいろ調べて、裏の事情を探していく(社会派推理)

剣乃ゆきひろ三部作に関して言えば、疑わしい人間の背景を探っていくということですね。

裏に何かありそうな人物が登場してきて、その人物の周辺を探っていくわけです。
こういうのは基本的な手法ですが、三部作すべてにおいて興味の惹き方がとても巧いのです。
謎がありそうな人物が登場して、その背景を探るということの繰り返しがとても楽しいわけです。

これは最近のノベルゲームとはちょっと違って、移動コマンドを使いながら物語が進んでいくというシステムなのもいいんでしょうね。
仮に剣乃ゆきひろ三部作を移動コマンド使わずに、普通のノベルゲーム的に進めていくとしたら、面白さが少し減少するかもしれません。
移動コマンド使いながら話が進んでいくというのは、ゲームっぽい感覚でいいんです。

たとえば同じところに何度も言っても同じ会話だけど、フラグが立つと新しい会話が出てきてストーリーが進んだりという楽しさがあるわけです。
ストーリーが進むのが普通であるノベルゲームでは、そういう部分の楽しさはないですね。
普通のノベルゲームでは話が進んでいくのは当然なわけですから。
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